2009.04.09 Thursday
雑記を見て一言。
出しとくか。
:解説:
ちょっと前に書いたものを載せる。
なんか、童話みたいなものを書きたくなったのだ。
たわごとに載せるべきかは考え中。
週末、カズミチは渓流釣りに訪れた。
今日は見事なイワナを2匹も釣り上げて上機嫌だった。
何の気なしに上流の方を見てみると、
河原で何かを洗っているカッパを見つけた。
本当にカッパかどうか確かめるために近付いてみると、なんだかおかしい。
よく見たらカッパは服を着ているようだ。
「緑色の服を着てる…。身体の色かと思ったのに違うじゃん。」
そんな納得いかない表情を浮かべていると、カッパがこっちに気付いた。
カッパはカズミチに会釈をした。
『あ、どうも…こんにちは。』
「あ…こんにちは。」
『あの…私に何か?』
「いや、アンタさ…カッパだよね?」
『えぇ…。』
「カッパなのに、なんで服着てんの?」
『いや、カッパが服を着ちゃおかしいですか?』
「え…いや、基本的に裸なのかと。」
『カッパ差別ですか。』
「…カッパ差別ってなんてあるの?」
『ありますよ。突然、子供に石を投げられた事もあります。』
「それは…わからんでもないな。」
『人間はみんな野蛮な生き物なんですか?』
「いや、そんな事も無いけど…、やっぱカッパが出たら驚くよ。」
『私も人間が出たら驚きますよ。でも、石を投げるのは違うでしょう。』
「えぇ、石を投げるのはちょっと…。」
『カッパだって人間は怖いんですよ。』
「え、でもなんか今、すごく自然だったじゃん。驚いてなかったじゃん。」
『なんか、フツーに登場されたので…。』
「俺もフツーに登場されたから、こうやってフツーに話してるけどさ、本来なら驚くべきだよね。」
『種族の差っていうんですかねぇ。』
「宇宙人を見てるカンジ?ちょっと違うかな。」
『宇宙人…ですか。ハハ…。』
「あれ?そういえばフツーに日本語をしゃべってるね。」
『えぇ、だってここは日本じゃないですか。』
「それに、カッパって沼に住んでるんじゃないの?」
『基本的に魚が獲れる場所の近辺ですよ。』
「へぇ〜、そうなんだ。」
『だって、息が続きませんもん。』
「あ、そうなの?」
『えぇ。カッパも呼吸が必要ですからね。』
「あ、そうなんだ?」
『えぇ。まさか、ずっと沈んでると思いました?』
「いや…そこまで考えた事が無かったわ。」
『そうでしょうね。最近は一族も減ってますから。人間と会う事も減りましたし。』
「あ、そうなんですか…やはり、環境破壊のせいで?」
『いや、キノコの食中毒です。』
「それは…お気の毒に…。」
『えぇ…ホントに気の毒で…。』
「あれ?そういえば、カッパって人を水の中に引きずり込むんじゃ…。」
『やめてくださいよ。そんなの人間が作った迷信じゃないですか。』
「え?そうなの?」
『そうですよ。子供が沼で溺れ死んだりするたびに、私らのせいにしたんですよ。』
「あぁ、そうなんだ。」
『足を引っ張られたんじゃなくて、ぬかるみにハマったんですよ。』
「それは…なんかスイマセン。」
『そのせいで我々は迫害されてきたんですから。』
「なんか…ホントに申し訳ない。」
『いいんですよ。』
「あ、そういえばカッパって皿が乾くと死ぬっていいますよね?」
『あぁ、それも迷信ですよ。』
「ホント?」
『人間だって目が乾いても死なないでしょ?』
「まぁ、シパシパするけどね。死にはしないね、ドライアイで。」
『それと同じようなもんですよ。』
「そうなんだ。へぇ〜。」
『ずっと水を飲まなければ、脱水症状は起こりますが、それは人間も同じでしょう。』
「あぁ、同じなんですね。」
『半水棲生物ですからね、水は飲みますよ。』
「キュウリが好きってのは?」
『体が緑色だからキュウリが好きだと思われてるんですよ。いい迷惑です。』
「あぁ、それもデマなんだ。」
『なんか、昔から言われてるのはウソばっかりですよ。浅はかな昔の人が作った話ばかりです。』
「お酒が好きなのもウソ?」
『酒なんか、口にする機会もありませんよ。』
「黄桜のCMだけか。」
『あ、それと文句を言いたい事があるんです。』
「人間に…ですか?」
『えぇ。屁のカッパってなんですか?カッパをバカにしないでもらいたい。』
「あ、スイマセン。」
『まったくもう。』
「なんか人間が色々とご迷惑おかけして…。」
『わかっていただければいいんですよ。』
「今はこちらで何を?」
『あぁ、洗濯です。』
「洗濯?あ、それは川でするんですね。」
『いや、下の子がおもらしをしましてね。』
「あ、お子さんがいらっしゃるんですか。」
『えぇ、2人いるんです。』
「えっと、卵でお産みになるんで?」
『うーん、その辺がちょっと違うんですよね。』
「というと?」
『鯉の滝登りって言うでしょう。』
「ええ。」
『登り切ったら龍になれるんですよ。』
「はぁ。」
『登れなかったらカッパになります。』
「そうなんですか?」
『まぁ、その登竜門と呼ばれる滝に辿り着く鯉も少ないんですがね。』
「はぁ〜、すごい話ですな。」
『とにかく、そこまで行けば、カッパか龍にはなれるというわけです。』
「龍もいるんですか。」
『えぇ、いますとも。』
「見た事がありませんね。」
『龍になると様々な能力が使えるので、人間に化けている龍もいます。』
「そうなんですか。」
『中には、人間界のリーダーになった人物もいるんですよ。』
「ほぉ〜。大したものだ。」
『龍も色んな姿で描かれるでしょう。』
「そういえば、そうですね。」
『空を飛ぶ長い竜、地を這う大型の龍。』
「そうですね。」
『あれも龍が姿を変えたものなんです。』
「カッパはなんか能力が使えたりするんですか?」
『いえ…特に何も。』
「そうなんだぁ。残念だなぁ。」
『そんなに過剰に期待されても困ります。人間だって何も特別な事は出来ないじゃないですか。』
「はぁ…すいません。」
『じゃあ、そろそろ帰りますね。』
「あの、名前とかってあるんですかね?」
『えぇ、私はラッタといいます。それでは。』
「ラッタさんね、お気を付けて。」
しばらくして、カズミチは気付いた。
「カッパのラッタさん…。かっぱ…らった?」
クーラーボックスの中を見ると、さっき釣り上げたイワナが無くなっていた。
「やられた。最初からイワナが目当てだったのか。」
多分、自分の方に注意を引き付けておいて、話に夢中になっている隙に仲間に盗ませたんだろう。
人からイワナをかっぱらったカッパの話。
めでたしめでたし。
:解説:
ちょっと前に書いたものを載せる。
なんか、童話みたいなものを書きたくなったのだ。
たわごとに載せるべきかは考え中。
週末、カズミチは渓流釣りに訪れた。
今日は見事なイワナを2匹も釣り上げて上機嫌だった。
何の気なしに上流の方を見てみると、
河原で何かを洗っているカッパを見つけた。
本当にカッパかどうか確かめるために近付いてみると、なんだかおかしい。
よく見たらカッパは服を着ているようだ。
「緑色の服を着てる…。身体の色かと思ったのに違うじゃん。」
そんな納得いかない表情を浮かべていると、カッパがこっちに気付いた。
カッパはカズミチに会釈をした。
『あ、どうも…こんにちは。』
「あ…こんにちは。」
『あの…私に何か?』
「いや、アンタさ…カッパだよね?」
『えぇ…。』
「カッパなのに、なんで服着てんの?」
『いや、カッパが服を着ちゃおかしいですか?』
「え…いや、基本的に裸なのかと。」
『カッパ差別ですか。』
「…カッパ差別ってなんてあるの?」
『ありますよ。突然、子供に石を投げられた事もあります。』
「それは…わからんでもないな。」
『人間はみんな野蛮な生き物なんですか?』
「いや、そんな事も無いけど…、やっぱカッパが出たら驚くよ。」
『私も人間が出たら驚きますよ。でも、石を投げるのは違うでしょう。』
「えぇ、石を投げるのはちょっと…。」
『カッパだって人間は怖いんですよ。』
「え、でもなんか今、すごく自然だったじゃん。驚いてなかったじゃん。」
『なんか、フツーに登場されたので…。』
「俺もフツーに登場されたから、こうやってフツーに話してるけどさ、本来なら驚くべきだよね。」
『種族の差っていうんですかねぇ。』
「宇宙人を見てるカンジ?ちょっと違うかな。」
『宇宙人…ですか。ハハ…。』
「あれ?そういえばフツーに日本語をしゃべってるね。」
『えぇ、だってここは日本じゃないですか。』
「それに、カッパって沼に住んでるんじゃないの?」
『基本的に魚が獲れる場所の近辺ですよ。』
「へぇ〜、そうなんだ。」
『だって、息が続きませんもん。』
「あ、そうなの?」
『えぇ。カッパも呼吸が必要ですからね。』
「あ、そうなんだ?」
『えぇ。まさか、ずっと沈んでると思いました?』
「いや…そこまで考えた事が無かったわ。」
『そうでしょうね。最近は一族も減ってますから。人間と会う事も減りましたし。』
「あ、そうなんですか…やはり、環境破壊のせいで?」
『いや、キノコの食中毒です。』
「それは…お気の毒に…。」
『えぇ…ホントに気の毒で…。』
「あれ?そういえば、カッパって人を水の中に引きずり込むんじゃ…。」
『やめてくださいよ。そんなの人間が作った迷信じゃないですか。』
「え?そうなの?」
『そうですよ。子供が沼で溺れ死んだりするたびに、私らのせいにしたんですよ。』
「あぁ、そうなんだ。」
『足を引っ張られたんじゃなくて、ぬかるみにハマったんですよ。』
「それは…なんかスイマセン。」
『そのせいで我々は迫害されてきたんですから。』
「なんか…ホントに申し訳ない。」
『いいんですよ。』
「あ、そういえばカッパって皿が乾くと死ぬっていいますよね?」
『あぁ、それも迷信ですよ。』
「ホント?」
『人間だって目が乾いても死なないでしょ?』
「まぁ、シパシパするけどね。死にはしないね、ドライアイで。」
『それと同じようなもんですよ。』
「そうなんだ。へぇ〜。」
『ずっと水を飲まなければ、脱水症状は起こりますが、それは人間も同じでしょう。』
「あぁ、同じなんですね。」
『半水棲生物ですからね、水は飲みますよ。』
「キュウリが好きってのは?」
『体が緑色だからキュウリが好きだと思われてるんですよ。いい迷惑です。』
「あぁ、それもデマなんだ。」
『なんか、昔から言われてるのはウソばっかりですよ。浅はかな昔の人が作った話ばかりです。』
「お酒が好きなのもウソ?」
『酒なんか、口にする機会もありませんよ。』
「黄桜のCMだけか。」
『あ、それと文句を言いたい事があるんです。』
「人間に…ですか?」
『えぇ。屁のカッパってなんですか?カッパをバカにしないでもらいたい。』
「あ、スイマセン。」
『まったくもう。』
「なんか人間が色々とご迷惑おかけして…。」
『わかっていただければいいんですよ。』
「今はこちらで何を?」
『あぁ、洗濯です。』
「洗濯?あ、それは川でするんですね。」
『いや、下の子がおもらしをしましてね。』
「あ、お子さんがいらっしゃるんですか。」
『えぇ、2人いるんです。』
「えっと、卵でお産みになるんで?」
『うーん、その辺がちょっと違うんですよね。』
「というと?」
『鯉の滝登りって言うでしょう。』
「ええ。」
『登り切ったら龍になれるんですよ。』
「はぁ。」
『登れなかったらカッパになります。』
「そうなんですか?」
『まぁ、その登竜門と呼ばれる滝に辿り着く鯉も少ないんですがね。』
「はぁ〜、すごい話ですな。」
『とにかく、そこまで行けば、カッパか龍にはなれるというわけです。』
「龍もいるんですか。」
『えぇ、いますとも。』
「見た事がありませんね。」
『龍になると様々な能力が使えるので、人間に化けている龍もいます。』
「そうなんですか。」
『中には、人間界のリーダーになった人物もいるんですよ。』
「ほぉ〜。大したものだ。」
『龍も色んな姿で描かれるでしょう。』
「そういえば、そうですね。」
『空を飛ぶ長い竜、地を這う大型の龍。』
「そうですね。」
『あれも龍が姿を変えたものなんです。』
「カッパはなんか能力が使えたりするんですか?」
『いえ…特に何も。』
「そうなんだぁ。残念だなぁ。」
『そんなに過剰に期待されても困ります。人間だって何も特別な事は出来ないじゃないですか。』
「はぁ…すいません。」
『じゃあ、そろそろ帰りますね。』
「あの、名前とかってあるんですかね?」
『えぇ、私はラッタといいます。それでは。』
「ラッタさんね、お気を付けて。」
しばらくして、カズミチは気付いた。
「カッパのラッタさん…。かっぱ…らった?」
クーラーボックスの中を見ると、さっき釣り上げたイワナが無くなっていた。
「やられた。最初からイワナが目当てだったのか。」
多分、自分の方に注意を引き付けておいて、話に夢中になっている隙に仲間に盗ませたんだろう。
人からイワナをかっぱらったカッパの話。
めでたしめでたし。